リッチOL小説~25歳、ショップ店員、ちえりの場合②~

リッチOL小説~25歳、ショップ店員、ちえりの場合②~ちえり2

リッチOL小説~25歳、ショップ店員、ちえりの場合②~

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8月最後の日も快晴であった。

 

秋葉原駅から徒歩10分の場所にちえりが働く派遣先の会社がある。

 

朝からうだるような暑さ。

他のサラリーマンたちと1分半は待たされる魔の赤信号で、青になるのを待ちながら後ろを振り返った。

お店のショーウィンドウに自分の姿が映っている。

 

長い黒髪にシフォン地のカットソー。ボトムに水色のフレアスカートを合わせている。

始めは見慣れなかった自分のOLコーデも、今では昔何を着ていたか思い出せないくらい馴染んでいる。

 

今では仕事用に合わせてプライベートの洋服も清楚系のものが増えていった。

相変わらず部屋はクローゼットと化したままであったが。

 

段ボールの製造会社で営業事務として働くちえりは、毎朝届く注文のFAXや、日中かかってくる電話での問合せに奔走している。

 

「〇〇会社の鈴木さんから納品が遅れてるって電話が入ってる。電話の1番取ってもらえる?」

「△△食品からFAX届いてたよ。」

「ありがとうございます。」

 

一仕事を終えた後の派遣社員たちとのお昼の時間も楽しい。仕事はそれなりに充実していた。

 

デスクワークなら最近ご褒美に買ったピンヒールも爪先が痛くならない。

 

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この日は友人と最近通い始めたマネースクールの研修日であった。

土日休みはちえりにもう一つの変化をもたらしていた。

 

仕事もお金も少し安定してきた所で、ちょうど習い事を始めたいと思っていた。

 

ずっと気になっていたヨガ、

家の近くの料理教室、

運動不足を補う為のジム、

思い切って着物教室なんてのも良いな。

とにかく東京は選択肢が多い。

 

その中であえてこの習い事を選んだのは、お金の勉強だけでなくヨガやスキンケア、バストアップといった美容に関する事が一緒に学べる事を知ったからであった。

入会金は少し高いと感じたが、1つの入会先で色んな事が学べるのはお得であった。

 

友人に誘われるまでちえりは、マネースクールという存在そのものを知らなかった。

 

フラットな感覚でマネースクールの会員となったちえりだが、株式のトレードやFX、不動産の売買といった難しくて怪しいイメージを持つ人もいるようだ。

 

智くんも初めは心配していたが、トレードはしないと話すと、一応安心してくれたようであった。

 

ちえりにとってお金の勉強はついでのような感覚であったが、徐々に楽しいと感じるようになってきた。

普段の生活では学べない事ばかりであった。

 

とりわけ、ちえりの今後の人生において最も重要であろう、キャッシュフロークワドラントという考え方は彼女に新しい可能性を生み出した。

 

ロバート・キヨサキが提唱するお金を稼ぐ方法を4つに区切ったキャッシュフロークワドラント。

すなわち収入を得る方法は雇用される事と、個人事業で働く事、ビジネスを興し人に働いてもらう事と、投資家となってお金がお金を生み出す仕組みを作るという、4つの方法がある事を示したものである。

 

今ちえりは雇用者としての給与からしか収入先がない。

しかしこの働き方では時間を切り売りする事になるので、限界が来てしまう。

 

よくよく考えると当たり前の事なのに、改めてお金持ちと自分の違いを理解する事ができた。

今まで、もっと給与の高い所で働けばお金の問題は解決すると思っていた。もちろんそれは正しいけど、それだけじゃ足りない。

自分以外のものを同時に働かせる事が、お金に困らない生活に必要なのである。

 

知識を付けた事で自分にも始められる投資がある事を知った。

ちえりにとって新たな扉が開いた瞬間であった。

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