リッチOL小説~25歳、ショップ店員、ちえりの場合②~

リッチOL小説~25歳、ショップ店員、ちえりの場合②~ちえり2

リッチOL小説~25歳、ショップ店員、ちえりの場合②~

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8

 

蝉の音が締め切った窓越しからでも響いてくる。

エアコンの効いた涼しい部屋で彼と漫画を読みながらのんびり過ごす午後。

 

アパレル会社を退職した後、ちえりは事務の仕事を求めて派遣社員として働いていた。

 

知人のアドバイスで、派遣会社には時給1,600円以上の事務職という条件で探してもらった。

経験もないのにそんなに高い時給で雇ってもらえるのか心配ではあったが、予想を上回る早さで希望通りの仕事が決まった。

 

大手印刷会社の下請けとして段ボールを作っている会社の営業事務。

時給1,650円。

就業時間 9:001800

残業20時間程度。

社会保障も厚生年金、健康保険が完備されている。

 

初めての転職で驚いた事はもう1つある。

それは転職市場において自分がまだ若いという事。

 

ちえりの勤めていたお店では店長に次いでちえりが2番目に年上であった。

自分より下の子達は短大卒や高卒の子も多く、アルバイトに至っては18歳という子もいた。

そんな事もあってちえりは自分の事が、25歳にしておばさんのように感じていた。

 

時給1,650円で雇ってもらえたのは、年齢がまだ若いからだと聞かされた時は驚いてしまった。むしろ経験値の高い3040歳代の人のほうが高いものだと思っていた。

 

若さがこれほど武器になるとは。

逆を言えば年齢を重ねるごとに時給が先細りになるという事でもあった。

いつまでもこの状態でいられない事は自ずと理解できた。

 

派遣の仕事を始めて変わったのは給与だけではない。

土日休みはちえりに多くの変化をもたらした。

 

1か月に1度会えれば良いほうであった彼とは、土日を利用して会う機会が増えた。

その恩恵によりこうして今彼の部屋でのんびり過ごす事ができている。

 

彼の家にある少年漫画を読み終わり、部屋の中を見渡す。

家賃58,000円の彼の部屋はちえりの部屋より少し広い8畳の1Rであった。

 

クローゼットの扉にはスーツがかけられている。

智くんはちえりと付き合う1年程前まで公務員を目指し、浪人しながら勉強を続けていた。2度目の試験に失敗した後、諦めて電子機器会社の営業として働き始めた。

彼もまた第二新卒としてキャリアをスタートさせたばかりなのであった。

 

元々温和な性格の彼。営業という仕事が得意ではないらしい。

実際彼が営業職で働く事を知った時はちえりもかなり驚いてしまった。

 

今の会社を選んだ理由が、他の会社と比べて給与が良かったからという事を聞いて、世知辛い世の中に少し悲しくなった。それでも彼のスーツ姿は最高にカッコイイと思っていた。

 

太陽が西の空に傾き始めたの見てちえりは憂鬱な気持ちになった。

明日からまた仕事が始まる。

そろそろ自分の家に帰らなければ…

 

 

彼との時間はまだ永遠を担保されてはいなかった。

ちえりには帰る場所がある。

 

彼と付き合い始めて1年半が経過しようとしていた。

ちえりは現在26歳。あと2か月で27歳になろうとしている。

地元の友だちは結婚や出産とライフイベントを経験する時期。

 

心の中ではそろそろ私たちも…と思っていた。

しかし彼はまだまだ友だちと飲みに行ったり趣味を楽しむので忙しそうだ。

 

一緒に過ごす時間が増えたからといって関係性が変わる訳ではない事を知った。

それだけに1年前から変わらないこの関係性にちえりはやきもきしていた。

 

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