リッチOL小説~25歳、ショップ店員、ちえりの場合④~
20××年3月
29歳になったちえりは、引越作業に追われていた。
2年前に掲げた夢がやっと実現しようとしていた。
家を購入したのである。
2DK。今住んでいるマンションの2倍の広さはある。
駅から6分と立地も悪くない。
キッチン、ベッドルーム、トイレ、お風呂。
それぞれにスペースがあり、生活感のしやすさがある。
「ここに決めます。」
そう言ったのは1か月半も前の事。
立地、部屋の広さ。
オートロックでない点は少し気になるが、それ以外はとても気に入った。
まだカーテンの取り付けられていない窓を開けて、目の前の通りを眺めた。
一気に実感が湧いてくる。これからはこの部屋に住むのだと。
仕事のほうは色々ありながらも、同じ場所で続けられている。
今年で無事3年目の春を迎える事ができた。
仕事のできる川崎係長との差は埋まる事はなく、彼女は現在課長となっていた。
全てが順風満帆とは言えない。
仕事では怒られてばかりだし、デートはしているがお付き合いしている人も今はいない。
それでも自分の人生を生きている実感がある。
今はちえりにとってそれで十分であった。
そういえば、かつての恋人であった智くんは、営業の仕事を辞めて今では地元のローカル紙の記者になったと風のうわさで聞いた。
彼に未練はないが、苦手な営業という仕事から解放された事で、楽しい人生を送ってくれていたらと心から思えた。
7月
目黒にある和と洋の融合がテーマの洗練された空間で、今日はマネースクールのランチパーティーが開かれる。
この日のちえりは川崎課長と共に浴衣姿で登場した。
白地に毬の模様が散りばめられたレトロ可愛い課長と対照的に、
紺地に菖蒲の花模様をあしらった少し大人なちえりの浴衣。
髪も美容院で整えてもらい、完璧な状態で臨んだ。
「半年に一度のパーティー、いつもながらワクワクするね!
今回はどんな案件の紹介があるかな♪」
体験会を経て同じマネースクールに入った川崎課長は、ちえりよりはるかに多い貯金を武器にどんどん投資を進めていて、もはやちえりの”後輩”とは言えないほど、立派な女性投資家の顔を見せていた。
「ちえりさん、浴衣すっごく似合ってますね♡
お花がインパクトあるのに大人っぽい!」
スクールの同期生の誉め言葉が素直に嬉しい。
‟You have a much better life, if you wear impressive clothes.”
「印象的な服を着る事で、人生はもっと良いものになる。」
服は一つのステータスの象徴に過ぎないが、心の機微を表すバロメーターでもある。
ちえりは今好きな服を着て、好きな場所に住み、今日は美味しいものを食べる。
これからもっと充実した日が待っている気がする。
ヴィヴィアンの言葉が実感できる日が来るなんて、
昔の自分では想像もしていなかった。
さぁ、パーティーの始まる時間だ。
「行こう、白石ちゃん」
声をかけられ、席へ向かうちえりの足取りはいつになく弾んでいた。
ちえりの物語 完
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